210円しか入れていないのにレッドブルが10本出てきた。
これが異常な事はぼくの頭でも理解できた。

ぼくのなかの天使と悪魔が聞こえてくる。
悪魔「逃げろ。今なら誰にも見られていない。」
天使(裏声)「お前さん、この自販機をよく見てご覧。「故障の場合はこちらまで」と電話番号まで添えて書かれているだろう?ここに電話をかけるといい。」
悪魔「そんな事して事情聴取で時間を取られたらどうする?見たかった映画も見逃しちゃうぜ?」

辺りに人気はない。
ホームへ電車が到着流れ込んでくる。

この電車に乗って一刻も早くこの場から離れよう。
ぼくはそう決めた。
次の瞬間、ぼくの目に飛び込んできたのは天井に備え付けられている監視カメラであった。

見られていた。
ぼくが210円しか払っていないのに、取り出し口から10本のレッドブルを取り出したところを。
そしてそれをリュックに詰め込み、誰かがそれを見ていないか辺りをキョロキョロしていたところさえも。一部始終をこの監視カメラには見られていた。

ぼくは観念した。

やはり悪い事はできないなと思った。
しかし映画の時間は迫っている。
電車のドアが開いた。

乗っていた乗客が駅のホームに降りてくる。

ぼくは急いで1本のレッドブルをリュックから取り出し、プルトップを素早く開け、1口グイと飲んだ。そしてカメラに向かって会釈した。

「いつも美味しく頂いてます。この10本も大切に最後まで飲み切ります。」
そういう目線を送った。

盗むのは悪い事だ絶対にしてはいけない。
だがこれは盗んだのではなく、疲れた自分への「がんばれ」というメッセージだとぼくは解釈した。

メッセージならば、受け取らないのが野暮である。

ぼくはレッドブルの力を借りて、その後の2つの予定を颯爽とこなした。

頑張れをありがとう。
翼をさずけてくれてありがとう。
頑張るすべての人たちにレッドブルを。

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