朝の散歩中、道路に男性用のおパンツが落ちていた。
いや、脱ぎ散らかされていた。

ドラクエなら
「めのまえに おパンツが あらわれた」
と戦闘モードに突入せんばかりの唐突な出会いであった。

このままにしておくと、この街の住人を恐怖に陥れ続けるに違いない。

「この村はおれがまもる・・・!」

ぼくはおパンツとの戦闘に臨んだ。

 

まずは自分の装備を確認する。
ジャージ・スポーツシューズ・短パンと非常に心許ない。
唯一武器になりそうなものといえばポケットに入れられた小銭入れとその中に入っている小銭ぐらいである。
銭形平次ばりに小銭を投げて敵をバンバンなぎ倒す自分を想像するも、相手はおパンツだ。おそらく効果はないだろう。よしんば効果があったとしても、この小銭は朝食のコーヒーとドーナツ代である。それらを犠牲にしてこのおパンツを倒す?何のため?ありえない。ぼくは自分の意見を却下した。

かくして、ぼくは素手でおパンツと対峙する事となった。

 

いつおパンツが襲いかかってくるともわからない。
ぼくは緊張を解く事のないように、手頃な武器がないか辺りを見回した。

「なにか長い棒的なものがあればいいんだが。」

いらない時はすぐに目につくのに、いざ必要になると見当たらない。

「くっ、だめか!」

ぼくは武器を探すのを諦めた。
しかし素手でおパンツと戦う勇気は出ない。
道端に落ちているおパンツなのだ。相当なワケアリに違いない。素手で触るなど自殺行為に等しい。

 

ぼくは次の手をうつことにした。

「武器がだめなら、強力な仲間よ!」

一緒におパンツと戦ってくれる仲間がいないか探したのである。
幸いここは住宅街。
朝の通勤時間まではまだ少しあるが、ここを通る人はきっと現れるに違いない。
と、思う間もなく、通りの向こうから一人の女性が歩いてくるのが見えた。きっと駅に向かって歩いているのだろう。

「おはよう! ところで、助けてくれないか!」

ぼくは心の中で叫んだ。
おパンツはそれでも微動だにしない。余裕の構えだ。

彼女からのなんらかの回答をぼくは期待した。
「パンツ落ちてますね。私が片付けておきますね」
「あ、すみませんそれ私のパンツです片付けます」
「なんか大変そうですねベホマズンかけますね」
どれでもいいのだ。話すきっかけにさえなれば。

ぼくの叫びが届いたのか、彼女はぼくの存在を視認した。
次にぼくの足元にあるおパンツの存在も確認し、そして目線を進行方向に移しスタスタと歩き続けた。

ぼくとおパンツはスルーされた。
ぼくとパンツだけが朝の光を浴びて佇んでいた。

その暖かさは春の訪れを予感させた。もう3月も終わる。

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