痩せたい気持ち


家にいる時間に比例して体重が増加した。

自分のベスト体重から日に日に離れていく事に恐怖を感じ、
これを食い止めるべく、朝起きてウォーキングをする事に決めた。

朝6時、起床。
いつもより少し早めに目が覚めた。
天気がどうやら良さそうで、ウォーキングを始めるにはうってつけだ。
布団から抜け出しジャージに着替える。
持ち物はスマホ、小銭入れ、そして小説の3点セット。
余計なものを持ってウォーキングの純度を下げたくはない。
ちなみに小説は東野圭吾の『白夜行』。推理小説の金字塔だ。

家を出る。
やや早歩きの速度を保ち線路沿いを歩く。
車の通りが少ないので、小説を読みながらのウォーキングでも危険はない。

小説の世界に惹きこまれながらも汗をかいて痩せられる。
これはいい。知性と体力を同時に鍛えられるではないか。

気付いたら隣の駅までやってきていた。
ウォーキング初日の目標地点はとりあえずここである。

が、しかし『白夜行』は前半のクライマックスを迎えている。
ここで本を閉じる事はできない。もう少し読み進めねば。

おれはさらに隣の駅に向かって歩みを進めた。

惹き込まれる東野圭吾の世界。
回転数を増すおれの両足。
鳴り出す腹の虫。

自分の腹の音で我に帰り顔をあげると、すでに次の駅まで来ている。
つまり2駅分歩いた事になる。道理で腹が鳴るわけだ。
何かを油であげたような香りがした。あたりを見回すとそこにはミスタードーナツがあった。

 


VS ミスタードーナツ


痩せたくてウォーキングをしているのにここでミスタードーナツが現れるとは。

誰が仕掛けた罠か知らないが、こんなわかりやすいものに引っ掛かると思っているのか。
たしかに好きさ。あぁ認める。おれはミスタードーナツ大好きだよ。
だが、だからってドーナツを今食べるほど愚かだと思うかい?
何のためにウォーキングしているかまるでわからなくなってしまうだろバカめ。
さらにいえば、たしかに、推理小説で頭をフル回転させた事で糖分が足りなくなった気もしていたよ。それは認める。
エンゼルフレンチやポン・デ・リングに含まれているのと同じぐらいの糖分は、あぁ、消費しただろうよ!
だからってここでドーナツを食べちまったら2駅分のウォーキングがまるでダメになっちまう。
・・・いや、待てよ。
おれが歩いた2駅分ってのはあくまで往路の事だ。復路を含めたら4駅分歩いた事になるんじゃぁないか?4駅も歩いたらドーナツ食べてもお釣りがくらぁ。いやしかし、往復して初めて1駅分というんじゃねぇか・・・。往路だけだと1駅分だといわねえのか・・・くそっ・・・わからねぇ!わからねぇよ!こんな難解な謎じゃ頭が割れちまいそうだぜ!!!

ぼくはこの難問に立ち向かうべく、店に入りチョコリングとホットコーヒーを注文した。

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