why me?

大学で芝居を学ぶため、高校を卒業したぼくは熊本から上京した。

インプロと呼ばれる即興芝居と、その第一人者である今井純氏と出会い、これを学びたいと強く思った。

学び始めて1年にも満たない頃、ワークショップ中に師はこう言った。

「インプロの父と呼ばれるキース・ジョンストンは、インプロのショーをほとんど見に行かない。馬鹿馬鹿しくて見ていられないから。」

そしてこう続けた。

「ただ、ある女性のパフォーマンスだけは見にいく。それはとてもエキサイティングでチャレンジングだから。彼女は即興の芝居を、その日劇場に来たお客さんと2人きりでやりとげる。」

痺れた。
キチガイだと思った。
かっこいいと思った。
今の自分には絶対にできないけれどいつかやってみたいと想いを馳せた。

それから10年以上時が経ち、ぼくはインプロを学び続けてきた。

彼女のスタイルに強く惹かれ続けていたぼくは、彼女を日本に招いてワークショップをやってもらう事を決意する。
しかし、うまくいかず頓挫。
ならばと、こちらから渡航し直接学びに行ってやると決意。
その途端、covid-19が世界を襲った。

これはもう完全に天から「一人でやってみんさい」と言われていると感じ、決行。

昔憧れた彼女のパフォーマンスを未だ見ていないため、完全なオリジナルのスタイルとなりました。

しかし、”お客さんと2人でやる即興芝居” という夢を与えてくれた彼女にぼくはいつか直接お礼を伝えたいと思っています。

こんな経緯から生まれた、即興の芝居です。