ラジオへの卑屈な熱
「願えば叶う」だとか
「夢を口にすれば引き寄せの法則が働く」だとか
そういう耳障りの良い言葉がぼくは大嫌いであった。
なぜならぼくは何年も前から
「ラジオをやりたい」
と言い続けていたにも関わらずそれが成就することは無かったからである。
ラジオ熱が最高の時は、口を開くたびに「ラジオをやりたい」と呟いていた。
やりたいと呟く事で、その機会が向こうからいつかやってくるのだと思っていた。
いつまで待っても来ないので呟く回数も徐々に減っていった。
口の中の水分は無くなり
喉がカラカラに乾き
唇が切れて血が出続けていた。
それでも言い続けていた。
「安西先生…バスケがしたいです」という三井寿の言葉を聞いて
「甘ったれんなよバスケなんかいつでもできるだろ。でもラジオはそうじゃない」と思うぐらいには病んでいた。
爆笑問題・トータルテンボス・伊集院光・バイリンガルニュース・古舘伊知郎・久米宏 etc…
ラジオの向こうには会話だけでリスナーを惹き込ませる猛者が大勢いた。
「あぁ、ぼくもあぁなりたい…でも、疲れちゃった。
なんだかとっても眠いんだ…」
横にいるパトラッシュにそう告げて目を瞑ろうとしたその時だった。
ぼくに転機が訪れたのである。
引き寄せの法則って信じてる? ぼくは信じてる。
それは、MCをさせていただいたイベントのスタッフを当時していた、Y女史との出会いであった。
Yはとにかくゲラだ。なんでも笑う。
箸が転んだだけでも三日三晩笑い続けるぐらいのゲラであった。
聞けば彼女もラジオが好きだと言う。
ラジオが好きすぎて好きすぎて家にテレビを置いていないのだ。
(因果関係が微妙にマッチしていない笑)
「ラジオやろうよ」
「うん、いいよ」
とものの2秒で決まった。
この数年間の手をこまねいていた時間があっという間に霧消した。
ここからはエンジンが全開になる。
ぼくの眠気は一気に吹き飛んだ。
隣で微睡んでいたパトラッシュを蹴り飛ばし、
一緒に会話ができるラジオパーソナリティの説得に奔走した。
選択肢は、かつて一緒にインプロをやってきたうっちー一択である。
ぼくが楽しく会話をできて
リスナーにも楽しい時間を提供できるのは
彼の他にあと13人ぐらいしかいない。
渋っていたうっちーを説き伏せ、ラジオの開始にこぎつけた。
それでは聞いてください。
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