母校へ


所用で、母校である日本大学へ行く。
ぼくが卒業する直前に校舎が改装され新しくなっていたが
その時と変わりなく綺麗な校舎が江古田に佇んでいた。
「江古田に住むなら俺んとこ挨拶来るのが筋っしょ?」と言わんばかりにでかい顔をしている。
在学時と何も変わっていない。

ぼくが行った時、学芸祭が催されており、
自身の学生時代が想起された。

1日1日を無駄にしてもなんの罪悪感も無く
楽しく過ごしていた毎日だった。
そしてとにかくアホであった。

すれ違う学生たちの表情を盗み見ると
マスクで顔半分が隠れているとはいえ
キリリッと表情が引き締まり、
当時のぼくなど足元にも及ばないほど凛々しい。

 


名前


現在のこの校内の敷地にぼくの居場所は無い。
卒業してから10年以上が経っているのだ。
どうにも居心地が悪い。

所用を済ませたぼくはサササと学校を去ることにした。

最後にお世話になった事務員の方に挨拶をするべく
事務室へ立ち寄ったその時であった。

見覚えのある顔が2つ並んでいた。
学生の時にお世話になった2人の教授であった。
その2人の教授もぼくの存在に気づいた。
懐かしいが、ぼくの事は覚えていないだろう。
ぼくが卒業した後もこのお二人はたくさんの生徒と接していたのだから。

「あれ? なんか見たことあるけど、名前なんだっけ?
ほら、あの学年で一番アホだったあいつだよ…」

そんなリアクションを恐れてぼくは先手をうつべく、
「長澤です! ご無沙汰してます!」
と声をかけようとしたその時であった。

「あれ、長澤くんじゃないですか」
と声をかけてくださった。

改めて言うが、ぼくが卒業して12〜13年が経っているのである。
しかも今日ここへ来る事は誰にも伝えていない。

覚えていてくださったのだ。
(つられてぼくも
「◯◯先生と△△先生!」と
先生の名前をとっさに思い出した)

しかも教授方が覚えていたのはぼくの名前だけではなかった。
「◯◯にも出たよね」と
当時の思い出話を、先週あった出来事くらいの温度感で話してくださるのだ。

これは正直、かなり嬉しかった。

(あとから3人目の教授とも遭遇したのだが、
「あ〜なんだっけ、長澤ひで…、あ〜なんだっけ」
と最後の「とも」以外の部分は覚えてくださっていた)

軽くお話をして帰ってきたが、
その日ぼくは興奮して眠りにつくまでいつもより少し時間を要した。

しばらく会っていない人に名前を覚えてもらってるのは嬉しい事である。

単純な事ではあるが、なかなかできない体験をした。

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