ざいまん
ぼくは漫才が好きだ。
好きな漫才師を挙げれば枚挙に遑がない。
漫才というマイク1本を使った喋りだけの表現に魅力を感じており、気に入った漫才師のネタをYouTubeで漁る事は日常茶飯事である。
少し前から気になっている漫才コンビとして、ウーマンラッシュアワーがいた。
早口でまくしたてる村本さんと、絶妙な間合いでそれをサポートする中川パラダイスさんのコンビである。
ただし、気になっていた理由は漫才に惹かれたからではなかった。
村本さんがしばしばネット上で炎上していたのである。それは、
「選挙に行った事がない」とか
「尖閣諸島はあげちゃえばいい」といった発言が理由であった。
これらに対しての是非はここでは話さないが、ぼくとしては
「どうしてわざわざ炎上しそうなトピックを話すのだろう」と単純に疑問に思っていた。
しかしぼくは彼に対してネガティブな感情は持っていなかった。
それはこのコンビが時事ネタを漫才で扱っていたからである。
ぼくは時事ネタを扱う表現というのが大好きなのだ。
時事問題を漫才で扱うコンビとして爆笑問題も挙げられる。
しかしウーマンラッシュアワーと爆笑問題の大きく異なる点は、時事問題の扱い方だ。爆笑問題が時事ネタを笑いに昇華しているのに対し、ウーマンラッシュアワーの漫才ははっきりと「No」と見解を述べている。それは例えば福島の原発に対してだったり、東京オリンピックに対してだったり様々だ。
出会いはいつも唐突
ある日、本屋に行くと、その村本さんの本が出ていた。
タイトルは『おれは無関心なあなたを傷つけたい』。
ぼくはすぐさま買い物カゴにねじ込んだ。
この本には村本さんの怒りが綴られていた。
「犠牲は誰かの安心のための生贄だ」
「「情報」というのは誰かの痛みだ」
「無知は縁がなかっただけ。「恥ずかしい」なんて思わなくていい。間違えは、知るきっかけをつくる」
「何の犠牲もなく得たものには価値を感じられない」
「嫌われてもいい、傷つける覚悟で笑いを表現することは、笑いを本当の意味で成長させる。」
「世間に対してカウンターパンチを打てる人」
「テーマパークの中に逃げようとするあなたに、最高の現実を見せたい」
名言は数多く、本は折り目だらけになった。
彼はただ炎上していたわけではなかった。
闘っていた。
まだ日本には無い価値観で笑いを作り出すために。
ぼくは彼が一気に好きになった。
表現者の端くれであるならば発信をしていく必要がある。
それが間違っててもいい。間違いは修正していけばいい。
ぼくの価値観を揺さぶられた1冊となった。