private lesson
女性2人の劇団magnets(げきだんマグネッツ)から依頼を受け、プライベートレッスンをやる事になった。
プライベートレッスン。
非常に甘美な響きである。
この2人はぼくを信頼しきっていて、ぼくに教えを乞うているのだ。
ぼくが「黒」と言えば白も黒くなる、カリスマ教祖的ポジション。
「『why me?』の競合になりたい」と豪語する彼女たちに向けてプライベートレッスンを行なうという事は、ぼくが自分でライバルを育成する事と同義である。
が、ぼくはそこまで人間ができていない。
なぜ未来の脅威を自分でせっせと育まなくてはならないのか。
カカロットを鍛えるベジータなんて存在しないはずだ。
ぼくは、即興芝居をつくるための大事なポイントは全てひた隠したまま、
森羅万象を「黒」と洗脳する事を決めた。
それでも謝礼が貰えるおいしい仕事だ。
スケジュール調整能力の低さが露呈
ここで問題が起きた。
ある日彼女たちから突如「今どこですか?」というLINEが届いた。
どうしてそんな事を尋ねてくるのだろう…と不可解ながらも連絡を取り合ってみると、どうもこの日はマグネッツのプライベートレッスンの日だったらしい。
ぼくが日程を勘違いしていたのである。
結果、ぼくが彼女達のスケジュールを宙ぶらりんとさせてしまった形になる。
ベジータだって人の子だ。これにはさすがに申し訳なさを感じた。
実施
そして先日、あらためて日程を調整しプライベートレッスンを実施。
申し訳なさは人を変える。
短い時間だが大切な事をとにかく伝えていく。
自分も完璧に実践できているわけではない事はひとまず棚に上げておき、とにかく伝える。
一つ一つ腑に落としながら進めていくものの、量は膨大だ。
何事においてもそうだが、「理解」と「体得」には大きな隔たりがある。
身体に染み込ませるには一定の時間も必要だ。
にも関わらず、とにかく伝え続けた。
終わる頃には彼女たちの頭はパンクしていたかもしれない。
何はともあれ3時間のプライベートレッスンは無事終了した。
彼女達の本番ももう迫っている。
(今回は満席で予約不可だそう。10名限定て)
マグネッツの本番がどうなろうとぼくの知ったこっちゃない。
成功も失敗も彼女たちの糧になるだけだ。
即興芝居。何も決まっていないが、「全てが順風満帆にいくわけがない」という事だけは決まっている。彼女達が即興芝居に向き合った時間分ぐらいは報われてほしいものである。