前回までのあらすじ
即興芝居の分野において「技術」を忌み嫌う人が一定数存在するというお話。
技術について
「技術はいらない」というこの言葉を聞いた時、ぼくは耳を疑った。
深く掘り下げて聞いていくとどうやら下記のことらしい。
インプロ(即興芝居)は人の魅力が伝えられるしそこに価値がある
↓
インプロではハプニングやアクシデントに遭遇した際の、役者の素が見える。
そこが一番面白い
↓
技術を身につけてしまうと素が出にくくなる。
そのため技術の習得はマストではない。
…とのこと。
世の中にはいろんな人がいるので彼女の価値観を否定はできない、という綺麗事でおさめることはぼくにはできなかった。
いや、趣味でやる分にはこれでいい。
全く問題はない。
しかしお客様からお金と時間をいただいて上演するのであれば、この考え方にぼくは大きな違和感を抱いてしまう。
うどん屋さんがうどんを入れる器にこだわるのは理解できるが、お客さんは器を見るのではなくうどんを食べに来ているのだ。
いくら魅力的な器にしたところでうどんが不味ければ客足は途絶える。
役者の素が見えるところが面白いのはぼくも同意するが、それはあくまで即興芝居の補助的な要素であり、メインではない。
当時のぼくは彼女を説得できる言葉も考え方も持ち合わせていなかったので、大きな違和感を胸に抱いたまま袂を分かった。
人は人の技術にお金を支払う。
人柄などはその次だ。
多分。