野心


昨年からぼくは
「即興芝居を日本の新しいエンターテイメントの1つとして確立する」
という狙いを明確に抱き始めた。

今まではただ即興芝居のクォリティを上げる事に注視していたが、『why me?』には世間に提供できるだけの何かしらの価値があると気付かされてからは、「どうすればもっと多くの人に知ってもらえるか」という視点を持つようになった。

即興芝居(インプロと呼ばれる)が日本に入ってきて20〜30年が経過しようとしているが、まだ日本において知名度は低い。知名度が上がらない理由は諸説あるが、「面白ければ人口に膾炙する」という考えに照らし合わせると単純に、大多数の人が「面白い」と思える即興がまだ日本では提供できていないのではないかという仮説にたどり着く。

 



ぼくは過去にチームを組み渋谷のライブハウスで月に1〜4回のペースでインプロのライブを上演していた。

それは芝居ではなく、
ゲーム寄りのコントであった。
人間を描く、というよりも、笑いが生まれるのであればナンセンスな表現でもOKという環境であった。
もちろん当時は、毎回のライブを良いものにしようと全力を注いでいたし、何よりそれが面白いものであると信じていた。

ライブ後の観客の反応は多種多様であった。
「ホンット楽しかったです!次回もまた来ます!」という意見もあったが、その一方で何も言わずにそそくさと帰ってしまうお客さんも少なくなかった。彼らの満足度が高くない事は一目瞭然であったが、どうすれば彼らを満足させられるかは解らなかった。

そしてある時ぼくはチームを離れる事にした。

「自分のパフォーマンスが悪い日でも、他のメンバーが助けてくれたり、なんらかの化学反応が起きたりするだろう」
という希望的観測を持って本番に臨んでいた日と決別。

これからはすべてを一人で対応しなければならないという事に正直ビビりはしたものの、『why me?』の上演を4回終え、この選択は間違ってなかった事を確信した。
あの日、ライブハウスでそそくさと帰らせてしまったお客さんも『why me?』であればもしかしたら満足させられるかもしれない。はたまた再びそそくさと帰らせてしまうかもしれない。
いずれにせよ、ぼくとお客さんの真剣勝負。
言い訳はできず、簡単ではない。

しかし『why me?』であれば
「即興芝居を日本の新しいエンターテイメントの1つとして確立する」
という夢を叶えられそうな気がしている。
そう信じさせてくれたのは他でもないお客様から寄せられるコメントと、スタッフの意見である。

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