前回の続き
ぼくと一緒にS2の最下位を争っていたのは、現在ロクディムというパフォーマンス集団で活動しているりょーちんだ。
日本で一番有名なインプロバイザーのうちの一人といって差し支えないだろう。
(ググったら彼の公式サイトを発見したのでここに記載する。
しばらく会わない間に様々な活動をやっているみたいだが、あの頃と変わらず相変わらずハゲてくれていて和んだ。)
しかし当時、彼とぼくとで決定的に異なるポイントがあった。
りょーちんは最下位にいる事をそのまま受け入れているような感じを持っていた。決して慌てず事象をそのまま丸っと受け止めているような。彼からは常に余裕を感じられた。「ケセラセラ」を地でいくような。人の業をそのまま一段高い視点から見ているような。
一方ぼくはというと、常に焦っていた。「最下位なんてとってもカッコ悪い」と思い、毎度毎度のショーでどうにかランキングを上げようと試行錯誤するも全て空回り。最下位のポジションを不動のものにしていった。何者かになりたくて足掻いている小者臭が芳醇に薫っていた。ライブ後はいつも家に帰って悔し泣きをしていた。あまりに空回りがすぎるので、延々と回し車を回し続けるハムスターに感情移入してしまいそれでまた泣いていた。当時の事は今思い出しても顔が熱くなる。
この時の感覚と、今シナリオを書けない感覚が似ている。
似て非なる
似てはいるが、
あの頃のぼくと
今現在のぼくでは、
「苦い経験の有無」
という点に於いてはっきりと区別ができる。
トンネルから抜け出せない時期の過ごし方みたいなものを、経験が教えてくれる。そう考えると、万年最下位を味わってきたあの経験も決して無駄ではなかったのかもしれない。
あの頃と比べて、今のぼくは焦りが薄い。
上手くいっていない現状をそのまま丸っと受け入れており、それでいて淡々と目の前の事を向き合うような感覚。
もしかするとあの頃のりょーちんの状態のようになれているのかもしれない。
ぼくもいつかりょーちんのように頭髪がなくなっていくのだろうか。
だとするととても悲しい。
りょーちんはこの困難をどうやって乗り越えていったのだろうか、いつか話を聞かせてほしいと思う。