花粉症
数年前から花粉症になった。
目の痒み、涙、くしゃみ、眠気、頭痛…。
およそ花粉の生み出す全ての影響をぼくはモロに受ける。
人と話してる時に涙が出るものだから
何気ない話でも感銘を受けてしまう人のようになっている。
このままでは日常生活もままならない。
花粉症の薬を貰いに病院まで行った。
平日にも関わらず混んでいる。
誰もが花粉の被害者だろう。
「皆で乗り切ろうな…」
ラグビー部ばりの連帯意識がきっと僕らには芽生えていた。
数分後、名前を呼ばれ診察室へ。
貫禄を感じさせる老練な医師が待っている。
彼はぼくの問診票を見てこう言った。
「花粉でしょ」
そしてぼくの鼻の穴と口の中をささっと見て
「一番強い薬出しておくから」
と続ける。
普段のぼくなら
「てめーいい加減な診察してんじゃねーぞこら」
と噛み付くところであるが
花粉で意識が朦朧としているぼくにはこの医者が神に見えていた。
「ありがとうございます…」
礼を告げ、診察室を後にする。
この間、わずか2分。
舌を巻いた。
2分で人1人救えるのである。
なんて崇高な職業なのだろう。
的確な診察。
経験に裏打ちされた処方。
ぼくはこの医者のテレホンカードを作り
常に財布に入れて携帯しておこうと強く誓った。