本棚、壊れ


10年以上にわたって本棚代わりに使っていた銀ラックがついに壊れた。
本を平積みにしてどんどん載せていたために重さの許容限界量をとうとう超えてしまった。

変わり果てた姿になってしまった銀ラックに礼を告げ、ぼくはニトリへと向かった。
銀ラックの戒名は「ぷりぷりぷりてぃシルバー (改)」にした。

 


ニトリ


ニトリには魅力的な本棚が多数取り揃えてあり、しかもどれもお手頃な価格であった。

「お値段以上」と謳うニトリに嘘偽りなし。

時間が経つのも忘れて本棚の物色を続けた。

そしてぼくはNクリックシリーズと呼ばれる本棚を購入する事に決めた。

本棚である事以外に何も求められる事のないような、徹底的に無駄を排除した至ってシンプルなデザイン。
さらに追加で板を購入する事によって2段から3段、3段から4段と、自由に棚の高さを変えられる点も魅力の一つだ。
これ以外の本棚はもうズラ親父にしか見えなくなっていた。

購入した商品は家まで送ってもらうのではなく、自分で持ち帰る事に決めた。どうしても本棚が本日中に欲しいという欲求が強かったからだ。
「人間には3大欲求がある」だなんていったい誰が言ったんだろう。どう数えても4大欲求ではないか。

 


試練


本体の重さが12kg超。これに追加の板が1枚。
合計約13kgである。

正直、4月15日の『why me?』を終えてからぼくは堕落した生活を続けていた。
主な活動拠点はソファ。
ここから半径50cmより外側へは行かないような生活だ。

そんなぼくにとって13kgの重さというのはかなりハードであった。

持ち方を変えたり、肩に載せてみたりと試行錯誤をしながら駅へと向かう。もちろん小休止を挟みながらだ。
5分もあれば到着する駅に永遠に辿り着けないような気がした。

本棚が欲しいだけなのにどうしてこんなにキツい想いをしなければならないのだろうか。
悪いのは銀ラックか。いや、ちがう。部屋に溢れている本たちだ。いや、それもちがう。本当に悪いのはその本を世に生み出す出版社だ。出版社が諸悪の根源なのだ。出版社さえ存在していなければ今ぼくの部屋が本で溢れる事も無かった筈だ。出版社さえなければ、小説や新書でぼくの人生が知性で彩られる事も無かっただろう。出版社さえ無ければ…。

この恨みを原動力にしてなんとか家までたどり着いた。

結果、1つの本棚だけでは収まり切らず、もう1つ同じものを購入しに行った。

ぼくは、今後は電子書籍の購入を視野に入れるのもアリかもなとぼんやり考えるようになった。

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