日記


日記を書く事にした。

現在学んでいる演技術 “チャバック・メソッド” では、演技をする際に自分の深層心理を使う。

自分の深く深くへと潜り込んでいく。
その過程で、今まで自分でも忘れていた過去の出来事が思い起こされたり、自分の顕在意識では思いもよらなかった自分自身の気持ちに気づいたりする。文面でうまく説明できないのが歯痒いが、これがなかなか興味深い。

1日24時間というのはあっという間に過ぎ去ってしまう。
活動時間・16時間のなかでもきっと何かを感じているタイミングがあるはずなのに、日々、時間に追われて生活する事で簡単に過ぎ去ってしまう。

それを防ぎたい。少なくとも1日の終わりにその日あった事を振り返りたい。自分の感情を1日の終わりに見直す事で、もっと自分の気持ちを大切にする事ができるし、もっともっと自分の深い部分までいけるようになるはずだ。

そんな想いからぼくは日記を書くことにした。

 

 


障害は自分


ここで厄介なのはぼく自身の気質だ。

ぼくは何をするにもまず形から入りたがる。
そしてそれは今回でも例外ではなかった。

日記という事であれば毎晩顔を付き合わせるものだ。
眠る前、瞼を閉じる直前に最後に目に写るそのノートとペンが、どこにでもあるような大学ノートと100均のペンでは味気無いではないか。
“瞳を閉じて君を描くよ” の “君” というのは絶対にお気に入りのノートとペンでありたいではないか。

「新しく買わねばなるまい…」

このコロナ禍の中、ぼくは日記となるノートとペンを探し歩くことにした。

 


出会い


大手の文房具屋へ足を運ぶ。

様々な文房具が所狭しと並んでいる。
人も多い。
いくらデジタル化が進む現代とはいえ、やはりアナログを好む人は一定数いるのだ。

ぼくは1時間弱、品定めをしてお気に入りのノートと本を見つける事ができた。

ノートは色彩豊かにアマゾンのような絵が描かれているもの。紙の側面にもイラストが描かれているのが気に入った。25本の罫線も日記をとても書きやすそうだ。
ペンは普段使っているものの色違い。黄色はぼくの好きな色だ。

どちらも自分の気に入ったものを購入する事ができ、非常に満足してぼくはカンガルー顔負けの跳躍スキップで家路へ着いた。

 


日記を書く


さぁいよいよ夜になり、日記を書く時間を迎えた。

最初の数行はノートとペンを購入した事や、日記を始めようとした背景などスラスラとペンがすすむ。

中盤を過ぎた頃だろうか。

ペンがピタァッ!と止まった。

 

書く事が無いのだ。見当たらない。
うんうん唸っても出涸らしは出涸らしだ。無いものは無い。

観念したぼくは字を大きめにして
「天気が良くてよかった」とか「楽しかった」とか「明日も頑張る」とか書き連ねた。
その瞬間、それは日記ではなくただの作文に成り下がった。

「そうか、ぼくは作文を書きたかったんだ。自分でも気づいていなかったけど、ぼくの潜在意識は作文を書きたかったに違いない」

自らを納得させぼくは寝床に潜り込んだ。

明日からは消せるボールペンで書こう。

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